偉大なるセンコー様。

池原ダムがロクマルフィーバーに沸き始めた頃、定番ルアーは「センコー6in白」だったように記憶しておりまする。
ある日、某有名団体の試合に出場しておる仲間と、その後輩等と話をする機会がありましてな、話の途中でセンコー様の話題になったので御座るわ。
ワシの仲間(以下 タカシ)が、後輩(以下ケンジ君)から質問されよった。

「タカシさ~ん、なんでセンコーってそんなに釣れるんすかねぇ?
池原のデカイのみんなセンコーじゃないすかぁ~」

それに対してタカシは、
「センコーはフォール中に微妙に尻を振っているんだ。あの僅かな動きが効いてると思う」
などとほざいておった。
それからタカシは何かの本で読んだのであろう受け売り知識全開でセンコー様について熱弁しよった。
やれ動きがどうの、それに合ったロッドがどうのと。
ひとしきり猛舌した後、タカシはワシに意見を聞きおった。

「みんな使ってるからじゃねぇ~の」とワシは答えた(笑)。

確かにセンコー様は、色々な意味で善いワームだと思うので、ワシも大変にお世話になっておりまする。
しかしながら、ワシが使う理由は細かい動きがどうのこうのでは御座らんのじゃ。
大型のバスがよう釣れる理由を、細かい動きに求めることがまったくもって理解出来ぬ。
多くの御仁等が使用すれば自ずと釣れる数も多くなろうし、それほど多くの黒鱒を捕獲すれば大型も混ざってこよう。
要は、ワシも含めてなにゆえ斯様に多くの御仁等が使いたくなるのか…。
それが肝ではないかとワシは愚考致しまする。

「黒鱒く~ん、やっぱあのフォール中の微妙な尻振りに堪らず食っちゃうわけ?」

ワシが河童ならば是非とも黒鱒君に聞いてみたいところである。
しかしながらワシにはその様な力は御座らぬ。

確かに尻の振りも関係しておるのやも知れませぬ。プルプルと誠に艶かしく刺激的な動きを致します。
(まぁそれも人間の感覚でござるがのぅ(笑))
動きがいい!カラーバリエーションが豊富!
しかし、それだけでは全国津々浦々の釣師達の心は掴めませぬな。

釣れるから!!
それはその通りで御座りましょう。実際によう釣れまする。
ではなにゆえ釣れるのか、微妙な尻の振りゆえか…(笑)。

一見ただの棒に見えるこのワーム。定番リグとしてはやはり「ノーシンカー」で御座いましょう。
ここでノーシンカーについて少々弁舌させて頂きとう存じまする。

ワシのようなバス釣り凡人でさえも「なぜかノーシンカーはよう釣れる」と思いまする。
何を投げても、何を引いても相手にしてくれなんだ黒鱒君達が、目の前を「ホゲ~~」っと沈んでいくノーシンカーワームには迷わずパクリ。なんて事は日常茶飯事で御座ろう。
人によってはクランキングに絶対の自信を持つ御仁もおれば、シャッドのリアクションで食わぬ黒鱒はおらん!とか、スローロールこそ最強!などなど、様々な御仁がおられることでしょう。
では何ゆえ朝イチからノーシンカーワームを一日中投げ続ける御仁等が多いのか。
子供達などは特にその傾向が強う御座います。

あの子達には受け売りの安知識などは無用の長物。
「とにかく沢山のバスを釣りたい!」
純粋に左様思っておることで御座りましょう。
そして彼等が彼等なりに出した結論が、右手にダウンショット左手にノーシンカーでござる(笑)。
童ゆえに主戦場はオカッパリ。必然的に使えるルアーも限られる。その結果の右手と左手じゃ。

ダウンショットをズリズリする。釣れなければソレっぽいところにノーシンカーをポチャリと落とす。
そして移動。
実に潔いではござらぬか。
シャッドのリアクションなら獲れた魚もおったやも知れぬ。しかし左様なことはあの子等には関係のないこと。
「とにかく1尾でも多くのバスを釣りたい」
少なくともワシが幼少の頃はこれでよう御座った。

確かに何も考えず、ダウンショットやノーシンカーばかりを投げ続けるのはチイとばかり面白みに欠けるし、発想も貧弱になる。しかしながら子供達は正直じゃ、なんだかんだと言っても釣れ易いのは何かをよう分かっておる。

ただよう釣れるからといって職業黒鱒釣師の御仁等がノーシンカーやダウンショットのみに固執しないのはなぜか。
「勝てないから」それだけの話でござる。
少々荒っぽい物言いをさせて頂けば、そのてのライトリグで釣れる確立が高いことは百も承知。
当然の確率論のさらに上の上で凌ぎを削っておられるのが職業黒鱒釣師の御仁等であるがゆえに、多種多様な技術やそれに付随するルアーが必要になってくると思う次第で御座います。

大分話がそれました由、話をセンコー様に戻しまするが、
私が無い智慧絞って愚考致しますに「センコー様の飛距離をもって、あのホゲ~~~が出来る」
これこそが一大ムーブメントの一翼を担っておると思えてなりませぬ。
今となっては「ブッ飛びノーシンカーワーム」などは沢山出回っておりまするが、ワシが幼少の頃は皆無でござった。
釣れ釣れノーシンカーをあそこまでブッ飛ばすことの出来るワームが無かった。
ベイトタックルでもお構いなしに飛んでいく強烈なワームが。。。

センコー様が発売される前は、ワームにネイルシンカーを入れ込んだり、フックにコイルオモリや板オモリを巻いたり、「はぁ~面倒くせぇ~」と思いながらも釣れる為ならばとネチネチやっておりました。
バス君達からしてみれば正に恐怖の動き。ラインのみにしか制約されぬこの誠に自然で「ホゲ~~~」っと水平に落ちていくワーム。こいつめをベイトタックルでどうにか遠くに飛ばせないものかと日々試行錯誤しておりました。

「遠くに飛ばせて悪いことなど一つもない、今までより絶対釣れる」
「ベイトタックルが使用可能になれば、太いラインが巻ける」
「今まで手がつけられなかったヘビーカバーの奥の奥に入れ込めれば飛躍的に戦果は上がる」

ワシが斯様なことに頭を悩ませていた時、センコー様が鮮烈なデビューを果たしました。

「これを待っておったんじゃい!」と、迷わず飛びつきましたわい(笑)。
それからというもの、偉大なるセンコー様は身分の分け隔てなく、お手軽気軽にバスを釣らせて下さった。

小手先の受け売り知識しか持たぬ者に、偉大なるセンコー様に秘められた真の力など分かるわけがない。
枝葉を見て大樹に気づかず、支流を見て大海を欲せず」では、必ず商売猛者に食い物にされましょう。
これから先、黒鱒業界は益々飽和状態になり、己の求める黒鱒道を純粋に突き詰めて行くことが難しくなるは必定。ともに美しき流れの源を見紛うことなく精進して参りとう存じまする。

それにしてもセンコー様の御登場なくば、ワシの道具入れには未だ板オモリとコイルオモリが山盛りになっておったことでしょうな(笑)。
さてもその時代の先駆、センコー様は誠に偉大じゃった…。